潜在意識の偉大なる能力を感じる前世療法

仕事に行き詰って不安を感じ、

この先どうしたら打開できるのかを知りたくて、

ある男性がヒプノセラピーを受けに来られた。

男性は会社員で45歳である。

カウンセリングを行い、今回は前世療法で

潜在意識の中に答えを探しにいくことにした。

前世療法とは、前世の「記憶」を甦えさせて行う

スピリチュアルなセラピーだと

思っている方もいるかもしれないが、

決してそれだけのものではない。

クライアント本人の成長を促すために

必要で大切な何かに気づくことができる

セラピーとして行っており、

意識に浮かんでくることの全てが

必ずしも「記憶」だとは限らないのだ。

今回の前世療法もその全てが

「記憶」というわけではないと思われる。

しかし、前世療法としての本来の目的を果たした

良いセラピーの事例である。

(※この事例はご本人の了承を得て、セラピーの一部分だけを掲載している)

クライアントの潜在意識から浮かんできた前世の姿は、

ヨーロッパの貴族の男の子で名前はジャン、年は10歳。

格調高い装飾が施された豪華な部屋で

家族と食事をしている場面だ。

そこには、大きな長方形のテーブルがあり、

その短い辺には立派な髭をたくわえた

風格のある父親が座っている。

そして、その横の長い辺の端にマリア様のような

優しい顔の母親が座っていて、その横にはジャンの姉もいる。

ジャンはこの家の長男で、

この先、この家を継がなければならない。

しかし、今は貫禄のあるお父さんを目前にしては

とても自信がないようだ。

そして、この場面には

もう一人の不思議な存在がそこにいる。

その人は、父親と母親の間(ちょうどテーブルの角)

のところに立っているのだが、

まるで魔法使いのおばあさんのような風貌をしている。

そして、おばあさんは

ジャンの自信のない心を見透かしているかのように

薄笑いを浮かべて、ジャンを見ているのだ。

そして時折、母親に重なったり、離れたりを繰り返している。

更に分かることは、

そのおばあさんの姿はどうも、

ジャンにしか見えていないようなのである。

ジャンは、この家では何不自由なく、

見かけは優雅に過ごしているのだが、

本心は家を継ぐことへの不安で心がいっぱいになっているのだ。

ジャンが邸宅の外の緑に囲まれた庭に出たときに、

誰も居ないと思ってのんびりと歩いていて、ふと振り返ると、

壁の影からあのおばあさんが、薄笑いを浮かべてこちらを見ている。

なんとも、心を見透かされている気分で不愉快になる。

こんなことがたびたびあった。

そんなジャンは、その後勉強に励むようになる。

自分のできること、

成すべきことを地道に少しずつでも着実に行っていく。

そして、18歳のときのこと、

場所は同じ邸宅の外の庭の場面。

振り返ると、またあのおばあさんがいる。

しかし、10歳のときと比べて

おばあさんの身長が半分くらいになっていることに気づく。

そして、勉強を積み重ね30歳になったとき、

場所は同じ邸宅の外の庭で

おばあさんがこちらを見ているのだけれど、

おばあさんの身長は更に小さくなって、50cmぐらいになっている。

更に年を重ね、40歳。

既に結婚もして子供もできて、

いよいよ家を継ぐことになる。

あのおばあさんの姿は、

更に小さくなって、指で摘めるくらいになっている。

そしてその後、ついにあのおばあさんはいなくなる。

このときちょうどジャンの息子が10歳で、

邸宅の中で家族で食事をしている場面だ。

父親は既に亡くなり、

自分が以前父親が座っていたテーブルの

短い辺のところに座っている。

奥さんはすぐ左、

そして息子は自分の右にいる。

そして、どうも息子にだけしか見えていないが、

あのおばあさんの姿が、自分と奥さんの間にいて、

息子を見ているような気がする。

でも、父親のジャンには気にならない。

息子は自分の時と同じように自分の努力で

このおばあさんからの影響を弱めていくことができると

思っているからだ。

そして、思い返せば、今は亡き立派だった父親も

以前は同じ気持ちで、こうやって見守ってくれていたんだと

感じている。

このクライアントは、

自分の潜在意識から浮かんできたこの前世を見て、

今、自分がすべきことを着実にこなしていくことが

自分の現在の不安を少しずつでも解消していく

唯一の方法だと気づいたようだ。

そして、それをしていくことで、

この問題を乗り越えていくことができるという

自信と確信も持てたとおっしゃっていた。

それにしても良くできたストーリーであるとともに

興味深い内容でだった。

ご本人の解釈によると、

薄笑いを浮かべているおばあさんは

ジャンの不安の象徴であり、

その不安は、母親の息子への期待と不安にも絡んでいる。

父親はそれに気づいていながらも

息子を信じて見守っている姿など、

このクライアントの現在の両親との関係に

重なる内容であって納得させられたということだ。

しかし、クライアントの現在の問題は

跡継ぎの問題では決してない。

潜在意識は今の自分に必要で

大切なことを気づかせるために、

ちょうどいい前世をチョイスして見せてくれる。

それが「記憶」なのか「想像」なのかは

証明できないが、たとえ「想像」であっても、

意識していない「想像」として

意識の上に浮かび上がらせて

大事なことに気づかせようとするのだ。

潜在意識の偉大なる能力に驚かされるばかりだ。

Pocket